令04年4月13日 非公開裁決 棄却
請求人らは、承継債務のうち相続開始後に銀行から支払義務を免除された債務(本件債務、9億7370万円)につき、その債務免除益が一時所得として所得税等の更正処分を受けたことを前提に、本件債務は相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」に該当するとして審査請求をしました。
審判所では、次のとおり判断し、本件債務は「確実と認められるもの」には該当しないから、債務控除の対象とはならないとしました。なお、所得税等の更正処分は、東京高裁(Z888-2622)で、その全部が取り消されています。
「確実と認められるもの」とは、相続開始の時において、債務の存在が確実と認められるのみでは足りず、債権者による請求等により、債務者につきその債務の履行が義務付けられている債務であることが必要であり、その金額は、その時の客観的経済価値によって評価すると解すべきである。
被相続人は、和解条項に従って原債務を履行し、相続の開始の時において、支払条件により本件債務が免除されるために履行が必要となる残高は合計100万円であったこと、現に、請求人らが支払条件に従った履行をし、銀行により本件債務が免除されたこと等に照らして、相続の開始の時の現況により控除すべき債務の金額の客観的経済価値を評価すれば、100万円と認められるから、本件債務は、債権者である銀行の請求等により、債務者である被相続人につき債務の履行が義務付けられている債務であると認めることはできない。